現代語訳
さらに迷いの世界に還り、神通力をあらわして、自在に衆生を救うことができると述べられた。
この度は、正信偈「遊煩悩林現神通 入生死園示応化」について意味を分かりやすく解説します。
語句説明
遊・・・遊戯ということ。菩薩はあらゆる拘束をうけないこと。人を助けても助けたいというとらわれの心がない。
神通・・・不思議な力のはたらき。宿命通(自己の過去のすべてを知る)、天眼通(あらゆる世界を見渡す)、天耳通(全ての声を聞く)、他心通(あらゆる衆生の思いを知る)、神足通(何処へでも自由に行ける)、漏尽通(煩悩を断ち迷いに生まれない)の6つの神通のこと。
応化・・・人々の機縁に対応して、いろいろの姿と変えて現れ出ること。応化のために表れ出た仏。
正信偈の原文
遊煩悩林現神通
ゆうぼんのうりんげんじんずう
入生死園示応化
にゅうしょうじおんじおうげ
正信偈の書き下し文と現代語訳
【書き下し文】煩悩の林に遊んで神通を現じ、生死の園に入りて応化を示すといへり
【現代語訳】さらに迷いの世界に還り、神通力をあらわして、自在に衆生を救うことができると述べられた。
正信偈の分かりやすい解説
信心による変化
天親菩薩は、『浄土論』を記し「一心」の意味を明らかにされました。「広由本願力回向 為度群生彰一心」の所に「一心」とあります。
「一心」とは「信心」のことです。煩悩の絶えない私たちを助けたいと願われた阿弥陀様は「信心」を「南無阿弥陀仏」という形に変えて私たちに与えてくださっています。
この阿弥陀様より届けられた「信心」によって私たちがどう変化するのかを親鸞聖人は3つにまとめられています。
第1は、「帰入功徳大宝海 必獲入大会衆数」(功徳大宝海に帰入すれば、必ず大会衆の数に入ることを獲)
第2には、「得至蓮華蔵世界 即証真如法性身」(蓮華蔵世界に至ることを得れば、すなわち真如法性の身を証せしむ)
第3には、今回の「遊煩悩林現神通 入生死園示応化」(煩悩の林に遊びて神通を現じ、生死の園に入りて応化を示す)ということです。
第1では、「南無阿弥陀仏」におまかせするならば、すでに浄土に往生し、現に阿弥陀様のもとで説法を聴聞している菩薩様の仲間に必ず入ることになると言われます。第2では、汚れた煩悩まじりの私が、阿弥陀仏の浄土に往生すると言われます。
今回は第3では、「遊煩悩林現神通 入生死園示応化」とあります。
信後の3つの変化
①お浄土に参り、阿弥陀仏の説法を聞く菩薩方の仲間になる
②煩悩が無くせない凡夫が浄土に参れる
③仏になった後、残された大切な方のもとに帰り来て導く
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天親菩薩とは、どんな人なのか
天親菩薩について説明します。親鸞聖人が記された「正信偈」の中に登場し、一心を明らかにされた方です。 天親というと、福岡の街を思い浮かべるけど 関係はないよ。天親菩薩の「親」は親鸞聖人の名前の由来になっ ...
応化とは
「煩悩」とは、私たちの身体を煩わせ、心を悩ませるものです。
「神通」とは、仏や菩薩が人びとを救うために用いられるすぐれた力です。
「生死」とは、生まれ変わり死に変り、迷いの状態です。
「応化」とは、仏や菩薩が人びとを救うために、それぞれの人の状況に応じた形に変化してはたらかれることです。
ここでは浄土に往生した人がどのように過ごされるのかが示されています。浄土に往生した人は、清らかな浄土にとどまるのではなく、煩悩が林のようにはびこるこの世界に出入りし、迷いや苦しみに満ちた私たちの所に飛んできて、そこで苦しみ悩む人達に応じたはたらきかけ(救済)をすることになると記されています。浄土でゆっくりしているのではなく、他の人を導くのに遊ぶようにはたらきづめであるというのです。
正信偈の出拠
『浄土論』出第五門とは、大慈悲をもつて一切苦悩の衆生を観察して、応化身を示して、生死の園、煩悩の林のなかに回入して遊戯し、神通をもつて教化地に至る。
『浄土論』菩薩はかくのごとく五門の行を修して自利利他す。速やかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを得るゆゑなり。