現代語訳
浄土の教えを広めてくださった祖師方は、数限りない五濁の世の衆生をみなお導きになる。
この度は、正信偈「弘経大士宗師等 拯済無辺極濁悪」について意味を分かりやすく解説します。
語句説明
大士宗師等・・・七高僧の方々を表します
正信偈の原文
弘経大士宗師等
ぐきょうだいじしゅしとう
拯済無辺極濁悪
じょうさいむへんごくじょくあく
正信偈の書き下し文と現代語訳
弘経の大士・宗師等、無辺の極濁悪を拯済したまふ。
浄土の教えを広めてくださった祖師方は、数限りない五濁の世の衆生をみなお導きになる。
正信偈の分かりやすい解説
弘経大士とは
正信偈の解説も今回と次回で終りを迎えます。
「依釈段」の最後の4句ですが、「依釈段」の「結び」でもあり、「正信偈」全体の「結び」でもあります。
正信偈の中に「弘経大士宗師等 拯済無辺極濁悪」(弘経の大士・宗師等、無辺の極濁悪を拯済したまう)と記されています。「弘経の大士・宗師等」とは、「お経を弘めてくださった高僧がた」ということです。
そのお経とは『仏説無量寿経』のことです。これは「お釈迦様が説かれた無量寿仏(阿弥陀仏)についてのお経」ということです。
「大士」とは、「菩薩」という意味で龍樹菩薩と天親菩薩を指します。「宗師」とは、「真宗の祖師」ということで、中国の曇鸞大師・道綽禅師・善導大師の3人と、日本の源信僧都・源空(法然)聖人の2人のことを指しています。お釈迦様の教えの「真の宗(教え)」を伝えてくださった祖師方ということです。
拯済とは
次の「無辺の極濁悪を拯済したまう」とは、極めて濁りきった悪世に生きている人々を、必ず拯いとり(救済して)浄土に導くということです。
お釈迦様は、生涯にわたりたくさんの教えを残してくださいました。数あるお経の中から、お釈迦様が本当に伝えられたかった事を読み取ることは容易ではありません。なぜなら苦しみ悩む私たちは、煩悩に振り回され、悲しいことに自分に都合よくしか理解しないからです。私達の力では、お釈迦様の数あるお経の中から真意を読み取ることが出来ません。
だから、七高僧はお経を弘められる中で、その真意を明らかにしてくださいました。龍樹・天親の二菩薩は、釈尊のご真意を深く汲み取られたのでした。そして、曇鸞・道綽・善導・源信・源空の宗師がたは、二菩薩の教えに沿ってお経の本意を誤りなく読み解かれ、私達に分かるように明らかにしてくださいました。
その教えを受けて、親鸞聖人は『教行信証』「教巻」に、
教行信証
それ、真実の教を顕さば、すなわち『大無量寿経』これなり
と記されています。それは、つまり『仏説無量寿経』こそが、釈尊の教えの真実を顕しているお経であると明言し、その証拠には七高僧の論釈をたくさん引用して、浄土真宗のみ教えを残し伝えてくださいました。
親鸞聖人自らの手柄としたのではなく、親鸞聖人が私達に変わり、苦しみ悩む人々に、その教えの真意を教え伝えてくださいました。